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弁護士コラム Column

これって財産分与の対象になるの? 宝くじ当選金の場合

2013年12月11日
名古屋丸の内本部事務所  弁護士 勝又 敬介

  今年も年末が迫ってきました。皆さんは、今年のうちにきちんとやるべき事をやって気持ちよく年末を迎えられる方でしょうか。それとも、「今年こそはあれもこれもやっておきたかったのに、今年も出来なかった。」と嘆く方でしょうか。できれば気持ちよい年末を迎える側になりたいけれど、なかなか難しいものですよね。

​ さて、これも年末の風物詩の一つと言うべきでしょうか、名古屋駅周辺を始め、宝くじの販売の呼び声が熱を帯びてきました。宝くじが当たったことで、かえって家庭不和になってしまった、などという話も聞くところですが、それでは宝くじが当たった場合、この当選金は「財産分与」の対象となるのでしょうか。

​ 離婚事件においては、夫婦が婚姻生活を係属する中で形成された財産は、基本的に全て財産分与の対象となり、夫婦間で分割することになります。 これは、自分の名義の預貯金や退職金であっても、相手方名義で取得したマンションや株券でも同じことで、名義がどちらになっているかは問題になりません。
 ​ただし、例外的に、夫婦の一方が結婚前から持っていた財産や、親から相続した財産などは「特有財産」と呼ばれ、財産分与の対象外となります。 また、財産分与の割合について、「妻は専業主婦(あるいは夫が専業主夫)で、一銭も稼いでいない。我が家の財産は私が長年働いて稼いで貯めたものだから、半分も持って行かれるのは納得いかない。」というようなことを仰る方も(特に男性に)多いのですが、基本的には相手が専業主婦(主夫)であろうが何だろうが、2分の1ずつ、というのは離婚事件の大原則で、滅多なことではこの割合は変わりません。
​ 「結婚後に作った財産、増えた財産は全部半分」という原則は極めて強く、平たく言えば、依頼者の意向を受けて裁判所で一生懸命主張しても、取り合ってもらいにくい、というのが実情です。 財産分与について「全て2分の1ずつ」というルールが変更されるのは、当事者の特殊な才能等が極めて強く財産形成に寄与したと認められるようなケースに限られると考えた方がいいでしょう。

​ それでは、一方が小遣いから買った宝くじで1億円当たったような場合に、当選金も全額半分にするのでしょうか。​

 ​ 宝くじというのは、通常の給料等の収入とは違うし、買うか買わないか、どれだけ買うのか、どこの売り場で買うか、といった事項が全て購入者の勘と運次第というところがありますが、当事者の才能で当たるものでもありません(宝くじの当選番号や、競馬の仕込みレースの情報を特別に教える、といった宝くじやギャンブルを利用した詐欺商法には気をつけて下さい)。 この点、平成13年7月24日奈良家裁審判は、夫が自分の小遣いから購入した万馬券の利益で購入した不動産について、夫の特有財産には当たらないとしつつも、妻の生活扶助的な要素を考慮しても、妻の側に給付されるべき割合が3分の1に止まる旨を判示しました。
​ その判断理由を見ると、まず、特有財産に当たるかについて、「万馬券は夫婦の婚姻中に購入されたものであるし、本件物件はもともと夫婦及び家族の居住用財産として購入され、現に12年もの間夫婦の生活の本拠として使用されてきたものであること、万馬券というのは射倖性の高い財産で必ずしも相手方の固有の才覚だけで取得されたものともいえないこと、万馬券が相手方の小遣いで購入されたものであるとしても、小遣いは生活費の一部として家計に含まれると考えることができること」 から、当該不動産を相手方の特有財産とみるのは相当ではない、として特有財産には当たらないとしました。
​ 次に、財産分与の割合について、「万馬券という射倖性の高い臨時の収入については相手方の運によるところが大きいので、本件物件取得については相手方の寄与が大きいことを認めるべきである。」 として、婚姻生活の長さ、妻の現状の収入に対する生活扶助の必要性等も考慮して、2分の1ずつという大原則を修正して、妻側の取り分を3分の1としました。
​ この事例では、宝くじ当選金が不動産購入資金に充てられており、不動産は夫婦共同生活の基礎となるほか、不動産の維持管理に妻側の協力も当然にあったことなどの事情もありますので、純粋に宝くじ当選金の財産分与が争いになった場合と比較すれば、財産分与対象とする方が妥当だとの価値判断に結びつきやすいのではないかと思われます。単に宝くじ当選金について財産分与の請求が出た場合と単純に比較することは出来ませんが、裁判所の考え方を知る参考としても良いでしょう。
 ​ただし、ここで「財産分与で取られないように、宝くじを買おう」という考え方はオススメできません。上記のケースはあくまで奈良家庭裁判所における一つの参考事例で、例えば名古屋家庭裁判所や岐阜家庭裁判所でも同じような判断が出るとは限りませんし、奈良家裁でも以前と同じ判断が出るとは限りません。 そもそも、意気込んで宝くじを買っても、当たらなければ意味がありませんしね。

 ​​夢を求めて宝くじを購入される方も、宝くじを買うよりも貯金だという堅実な方も、よいお年をお迎えください。

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この記事の著者

勝又 敬介

弁護士

勝又 敬介(かつまた けいすけ)プロフィール詳細はこちら

名古屋丸の内本部事務所

所属弁護士会:愛知県弁護士会

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